Story

多摩美術大学の授業で「STUDIO」を導入。非常勤講師兼アートディレクターの田中美帆さんに聞く社会課題を解決する「ソーシャルデザイン」とは

STUDIOを利用しているユーザーにインタビューを行う企画「STUDIO Story」。 今回、登場していただくのは、多摩美術大学の非常勤講師として「ソーシャルデザイン論」の授業を担当する、田中美帆さんです。

Kaori Kobayashi

STUDIOを利用しているユーザーにインタビューを行う企画「STUDIO Story」。
今回、登場していただくのは、多摩美術大学(以下:多摩美)の非常勤講師として「ソーシャルデザイン論」の授業を担当する、田中美帆さんです。

ご自身で創業した株式会社 cocoroé(ココロエ)でもソーシャルデザイン事業に携わる田中さんは、自社のHPや多摩美の授業課題用のツールとして「STUDIO」を利用していただいている愛用者のお一人。

今回は、STUDIO代表取締役・石井 穣との対談形式で、「STUDIO」を利用した多摩美の課題内容やソーシャルデザインの取り組みについて伺いました。「STUDIO」が広げるデザインの可能性を追求します。

デザインで社会課題を解決する「ソーシャルデザイン」とは

石井 :まずは、田中さんのお仕事について聞かせてください。デザイン会社の経営と多摩美の非常勤講師、パラレルワーカーをされているんですよね。

田中 :はい。ソーシャルデザイン事業をメインとする株式会社 cocoroéの創業者兼、アートディレクターとして働く傍ら、多摩美術大学の非常勤講師として、同大学最大のコースであるグラフィックデザイン学科でソーシャルデザイン論の授業を担当しています。

石井 :田中さんの専門領域であるソーシャルデザインの概念や事例を伺えますか?

田中 :ソーシャルデザインとは企業・組織・個人の利益追求ではなく、デザインの力を使って社会や地域の課題を解決したり、社会貢献に通じる新たな価値を創造したり、といった公益性の高い取り組みを指します。

一つ自社で取り組んだソーシャルデザインの実例をお伝えすると、警視庁と弊社を含めた3チームのソーシャルデザインチームがタッグを組んだ「自転車交通安全」のプロジェクトがあります。これは、警察が市民を取り締まる垂直型のコミュニケーションではなく、市民が自らの意思で安全を意識できるような市民参加型のコミュニケーションで交通安全を促す取り組みです。

ソーシャルデザインは一方的な注意喚起ではなく「一緒に課題を解決していこう」という双方向のコミュニケーションが重要で、例えるなら「流しそうめん型」と「BBQ型」の違いというとわかりやすいかもしれません。上から下へ流れる流しそうめんではなく、各自の役割分担を決めて作業するBBQ型のように「場」を作ることが大事なんです。

石井 :なるほど。とてもわかりやすい例えですね。田中さんがソーシャルデザインをメインにされているのは、どんな理由からでしょうか?

田中:社会課題をデザインの創造力で解決する取り組みに大きな意義と魅力を感じたことと、デザイナーの職能を社会で活かせる可能性を追求したいとの思いがあります。

石井:ソーシャルデザインは、デザインの力を証明することにもつながりますよね。田中さんが多摩美の非常勤講師になったのは、何がキッカケだったのですか?

田中:大恩師から「多摩美のグラフィックデザイン学科でソーシャルデザインを教えたい」という相談を受けて、その強い想いに触れたことがキッカケでした。改めて考えてみたら、これから超高齢化社会を迎える日本にとって、インクルーシブデザイン(※)って必須なんですよね。そのことに気づいてから、本腰を入れて自分の知識・経験・スキルを学生たちに継承していこうと思うようになりました。

授業では、ソーシャルデザインの成功事例を伝えて概念を浸透させたり、企画立案を通して学生たちにソーシャルデザインを理解してもらったりしています。

※インクルーシブデザイン……高齢者・幼児・障がいのある方・外国人など、従来デザインプロセスから除外されてきた「極端ユーザー」にあえて焦点を当てるデザインプロセス。結果として、全ての人が満足する包括的(インクルーシブ)なデザインを生み出す事ができる。

「STUDIO」を使ったグループワーク課題の意図

石井 :今回、多摩美では学生さん向けに「STUDIO」のワークショップを開催した後に、「STUDIO」を使った課題に取り組んでいただいたとのことで、大変うれしく思います。改めて「STUDIO」に注目いただいた理由を聞かせてください。

田中 :今年から開講した「ソーシャルデザイン論II」の授業過程で、「WEB上でアイディアを発表するためのツール」がどうしても必要だったんです。コーディングスキルが未熟な学生でもWEBサイトを構築できる方法を模索していたところ、「STUDIO」にたどり着きました。

コーディングなしでビジュアルにこだわったWEBサイトが制作できることを魅力に感じたのはもちろん、ミーハーなんですがインターフェイスがカッコいいですよね。これを使ったら私でもカッコいいWEBサイトができる気がする!って思って(笑)。学生たちもきっと喜ぶだろうなって。

石井 :テンションが上がるコメントありがとうございます!(笑)特に美大の学生さんだと、自身のデザインのこだわりを細部まで表現したいという要望があるので、それを難しい操作なしで再現できるのは利点だったのかなと思います。当初お話を伺った際に、私もグラフィックデザイナーとSTUDIOは非常に相性が良いなと感じました。

田中 :こちらも快くワークショップの依頼を引き受けてくださり嬉しかったです。丁寧に教えてくださったので、学生たちのワークショップの満足度がすごく高かったんですよ。

以前に多摩美術大学でのSTUDIOワークショップの様子

石井 :それはよかったです! 「STUDIO」を活用した授業の内容について教えていただけますか?

田中:ジェンダーの平等性や多様性、フードロス、地域創生などの社会課題をテーマに4〜6名のチームを作り、それぞれの背景調査から解決のためのデザイン提案までをWEBでプレゼンテーションする、というのが授業内容でした。。この授業プロセスには以下3つの意図があります。

1、リサーチ力を身につけること
2、テーマを多角的に考える力を養うこと
3、社会課題解決のためにデザイン力を駆使すること

まずは社会状況を知り、その原因を知るためのリサーチ力を身につけてほしい。これはソーシャルデザインを推し進めるうえで絶対に必要なスキルです。また、一つのテーマを多角的な視点で考えたり、他者の意見に触れたりすることで自分の常識を疑う体験をしてほしかった。この過程を通して、物事の本質を捉えるクリティカルシンキング(※)を養うことができます。最後は、学生たちが普段学んでいる創造力、表現力を駆使してもらうことでした。

※クリティカルシンキング…ある考えに対し、誤りやかたよりがないかを確認し、さらによい考えがないかをさぐる思考法(出典:朝日学生新聞https://asagaku.com/recommend/line_news_top5/190225/18.html

石井 :なるほど。「STUDIO」は3つ目のデザイン力を駆使する目的のツールとして、選んでいただいたワケですね。

「STUDIO」を活用したWEB制作の3つのメリット

「海賊版撲滅」の課題解決をテーマにしたサービス「Imagine」より

「地方創生」の課題解決をテーマにしたサービス「おっちょこちょんぼ」より

石井:今回の課題で学生さんが制作されたプレゼンテーションWEBを拝見したところ、漫画やイラストが印象的で美大生らしさがあふれているなと感じました。

田中:ありがとうございます! 自分たちの得意分野をうまく発揮できた結果だと思います。ソーシャルデザインでは、イラスト・映像・図などのインフォグラフィックを使った”親しみやすい表現”と同時に“楽しく解決方法を模索すること”が重要になります。社会問題ってできれば避けて通りたいものだし、マジメに堅いトーンで伝えても多くの人に関心を持ってもらえないため、クリエイティブには特にこだわってもらいました。

石井 :この課題で「STUDIO」を使ったメリットがあれば、ぜひ聞かせてください。

田中 :今回、講師としての視点で以下3つのメリットを感じました。

1、ビジュアルを制作する感覚でWEBサイトが制作できた
2、コラボレーション機能で、チームワークを円滑にできた
3、構築から公開まですべて無料で利用できた

コーディングのような難解さがなく、デザインする感覚でスムーズにWEB構築ができたのは何よりの魅力だったと思います。また、今回はチームリーダーを筆頭にWEB構築担当、テキスト担当、イラスト担当など役割分担して制作したため、オンライン、かつリアルタイムで画面共有しながら制作に取り組めたのは非常に効率的でした。そして、基本の機能が無料で使えることも学生にとってはありがたい要素でしたね。

創造力を思う存分発揮して自分たちが考えた社会課題解決アイディアをWEBで表現できたことは、学生たちにとって誇りや自信がつく経験だったように思います。

石井 :学生さんたちの成長に貢献できたようで嬉しいですね。今後も「STUDIO」はバージョンアップを進めていく予定ですが、改善を希望する点があれば教えてください。

田中 :今回、まずはPC画面を制作して、のちほどレスポンシブ作業を行ったのですが、スマホ用の調整に負荷がかかってしまったので、夢のような理想を言えば、PCかスマホのどちらかを制作すると自動的に調整されるようになったら最高ですね。

石井 :なるほど……! すぐには難しいところですが、より価値を提供できるようバージョンアップを進めていきます!

これからのデザイナーに求められるスキルは「問う力」

石井 :田中さんは、これからのデザイナーに求められるのは、どんなスキルだと思われますか?

田中 :私の専門であるソーシャルデザインで言うと2つあり、まずは「問う力」です。「今、解決しようとしている課題は本当に正しいのか」という前提を疑うことが重要。それには念入りなリサーチとクリティカルシンキングが欠かせません。

もう1つは、「他者とのコミュニケーションを通じて課題を深堀りし、解決に向けてアイデアを集約する力」。特に性別・世代・業界などの垣根を超えた多様な人たちが集まるチームの中で、対話を通してお互いの違いを知り、課題の本質を引き出すことが求められると思います。

石井:デザイナーは表現力ばかりが評価されがちですが、それだけでなく、もっと根底的な視野も必要なんですね。そういった力を養うために、田中さんなりのアドバイスはありますか?

田中:学校やデザイン業界といった狭い枠をはみ出して行動することかなと思います。例えば、海外留学や他業種の人と触れ合う経験は非常に意義があることですが、もっと小さなことでも構いません。地域のコミュニティに所属したり、趣味のサークルで活動したりするだけでもお互いの違いを発見し、視座を広げる機会になるはずです。

石井 :これから田中さんがデザイナーとして叶えたいことはありますか?

田中 :ソーシャルデザイン界で活動する人の中には、子育て中のママをはじめ、中高生から高齢者、本業の傍らで活動している人など、多様なバックグラウンドの方が存在しています。「STUDIO」をうまく活用することで、WEB構築力を持たない方や小規模で活動している方でも自分の想いを世の中に発表することができるので、今後はソーシャルデザイン界にも「STUDIO」を広げていきたいですね。

石井 :ぜひ! そういった方々向けにも「STUDIO」のワークショップをやりましょう! 「STUDIO」はコーディングの壁を取っ払うことにより、誰でもWEB上で想いを表現することを可能にしたツールです。想いを持った人にどんどん活用してほしいと願っています。

株式会社 cocoroéのHP

田中 :すぐにでもワークショップやりましょう! 実は自社のHPも「STUDIO」で構築中で、まもなく公開できると思います。また、イベント告知用のLPにも「STUDIO」を活用させていただいています。今後もさまざまなシーンでお世話になります!

<予告> 次回の「STUDIOStory」は、田中さんの授業「ソーシャルデザイン論II」を履修した多摩美の学生さん2名にインタビュー。「STUDIO」を使ったプレゼンテーションWEBを完成させるまでの工程や「STUDIO」を活用したメリットなど、くわしく伺いました。ご期待ください!

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