STUDIOの活用は、Web制作における「内製・外注」の二元論に終始するものではない。必要なところへリソースを集中させ、時にはコラボレーションが生まれる可能性を秘めている。2024年2月、東京・渋谷にてSTUDIO DESIGN AWARD 2023の授賞式が開催され、標記のパネルディスカッションが行われた。ビジネス現場で活用されるシーンが加速するSTUDIOの利用用途について、STUDIOヘビーユーザーの “生の声” に迫る。壇上には、株式会社YOUTRUSTの田口氏、株式会社Luupの石田氏と東海林氏、RIZAPグループ株式会社の佐藤氏、ファシリテーターとしてSTUDIO株式会社の菊地が登場した。急成長企業として高い知名度を誇る3社では、果たしてSTUDIOをどのように活用しているのか。導入前後のBefore Afterほか、各社のビジネスユースケースを深掘りする。登壇者(写真左から)田口 彩人(株式会社YOUTRUST コミュニケーション局 局長)ユーザー数20万人超のキャリアSNS「YOUTRUST」を展開する株式会社YOUTRUSTに2023年4月入社。同年10月に新設されたコミュニケーション局 局長に就任。2024年1月から広告事業部マネージャーを兼任している。石田 弦也(株式会社Luup COO室 プロダクトマネージャー)新卒でメディア事業を運営するベンチャー企業に入社。その後、株式会社ミクシィで新規事業の企画開発に携わり、2022年3月にLuupにジョイン。現在はユーザー向けサービスのプロダクトマネジメント・プロダクトデザインに従事。東海林 ゆい(株式会社Luup COO室 デザイナー)東北芸術工科大学卒業後、ITベンチャー企業をはじめ複数の企業でデザイン業務に従事。2023年9月に株式会社Luupへ正社員1人目のデザイナーとして入社。サブスク体験プランの入会フローの体験設計やアプリ内のユーザーコミュニケーションなどを担当してきた。佐藤 直之(RIZAPグループ株式会社 プロダクト開発統括1部 部長)大学卒業後、インターネットサービスプロバイダでWebサービスの企画開発を担当。その後、DXを推進する不動産ベンチャーにて新規サービスの企画開発に携わったのち、2021年にRIZAPグループに参画。現在は、システム開発の責任者として事業のDX化や事業の立ち上げを進める。菊地 涼太(STUDIO株式会社 取締役 COO / CPO / Head of Japan)慶應義塾大学在学中に株式会社オハコを設立。資本業務提携を経て企業売却。2021年にSTUDIO株式会社へ入社すると、プロダクトデザイン責任者、カスタマーサービス部門長などを経て、2022年10月に執行役員就任。2024年1月より取締役 COO / CPO / Head of Japanを務める。急成長企業で生まれた、事業の加速ドライバーとなるSTUDIOのユースケース急成長中のスタートアップを筆頭に、勢いのある企業がSTUDIOを活用する事例が圧倒的に増え続けている。事業会社におけるノーコードツールの導入は、どのような役割、意味合いがあるのだろうか。まずは、日本のキャリアSNS『YOUTRUST』を運営する、株式会社YOUTRUSTの田口氏が自社の運用状況を紹介した。田口「YOUTRUSTというコアなサービスを軸に事業展開する中で、エンジニアのリソースはできるだけサービス開発に注力させたいと考えています。一方で、弊社自身はスタートアップとして、積極的にマーケティングの手数を多くしていきたいという思いがある。こうした背景から私たちは、社内のメンバーを中心に企画し、業務委託のデザイナーさんなどの協力を得ながらデザインの部分を担っていただき、STUDIOでキャンペーンページを制作・公開しています。」スタートアップならではのスピード感で施策を打ち続けるために、ノーコードツールという選択をしたYOUTRUST。数々のコラムや事例インタビュー、イベントレポートを公開するオウンドメディア『YOUTRUST JOURNAL』もSTUDIOで運営しているそうだ。社内には、プロモーション企画に長けたメンバーが揃っており、田口氏自身も広告代理店出身なのだという。次々と新しいキャンペーンが展開されるYOUTRUSTでは、アイデアを形にするまでの期間も短い。一定規模まで事業が成長した中にあっても、STUDIOは手放せない存在のようだ。これに対して、電動キックボードや電動アシスト自転車などのシェアリングサービス『LUUP』を展開する株式会社Luupの石田氏が反応する。同社でも同様の課題感からSTUDIOを使い始めたという。石田「リソースの最適化と柔軟性を重視した意思決定をするために、STUDIOは重要な選択肢となっています。コンテンツや施策の内容によって、ゼロからエンジニアが実装すべきか、STUDIOの活用で実装すべきかの判断ができるからです。例えば、新しいアイデアをクイックに試したい時や素早くPDCAを回したい時、一定の手戻りが見込まれる場合にはSTUDIOを使うようにしています」ファシリテーターを務める菊地は、以上の話に加えて、Luup社にはSTUDIOの珍しいユースケースがあることにも触れた。モバイルアプリの操作ガイドなどをWebビューコンテンツ(※)として外部に切り出し、かつそれをSTUDIOで作成しているのだという。※アプリ側でWebページ表示の機能を開発・実装する必要なく表示可能とする機能石田氏はこれに、円滑にアプリのアップデートをする上で試行錯誤した際、自然と今のやり方に落ち着いたのだと説明した。Webビューコンテンツを使えば、アプリのアップデートごとに必要なストア(AppStore / Google Play)への申請をすることなく、Webページの更新のみで済ませることができる。しかもそれをSTUDIOで実行するのだから合理的だ。では、RIZAPグループの場合はどうだろうか? 菊地が話を振ると、事業が加速度的に成長し続ける現在のフェーズにおいて、STUDIOの機能は自社が求めることに対して非常にマッチしていると佐藤氏が答える。佐藤「弊社では、開発内製化&開発効率化の一環でSTUDIOを採用しました。社外からどう見えているかはわかりませんが、社内からの景色としては"スピード"も重視される要素です。RIZAPグループは子会社が60以上あるため、急ぎコーポレートサイトを作ってほしいなどと依頼されることもあります。また、chocoZAPのFAQは非常にトラフィックが多いページなのですが、STUDIOのCMS機能を使うことで更新作業をはじめとした運用がスムーズに回っています。開発部門が携わったのは最初の構築までで、その後は運用を企画部門に任せることができています」改めてSTUDIO導入の経緯を整理すると、IT人材が一人もいない時期に佐藤氏は「Webまわりの内製化を進めたい」と自ら手をあげる形で入社をしたというのだ。そこから一人、エンジニアやデザイナーが不在の状態から現在の環境を作り上げた。そこで活躍したのがSTUDIOで、ノーコードツールのさまざまな恩恵を享受したという。今でも毎月1つは新たなプロジェクトが立ち上がる状況のため、今後もSTUDIOを使い倒していきたいと意気込みを語った。ノーコードツールが「予算削減とスピード重視」の要求へ“期待以上”に応えるSTUDIO導入の前後で、社内に変化はあったのだろうか。YOUTRUSTの田口氏は、自身が2023年4月入社のため「前後比較はできないが」と前置きしつつ、半年ほど前まではマーケティングや広報、デザイン、編集担当の多くが業務委託・副業のメンバーだったことを踏まえ、STUDIOの貢献度の高さに触れた。田口「佐藤さんのお話にもあったように、開発スピードや運用面のメリットが大きいため、STUDIOを活用することで企画やデザインなどもギリギリまで考えてからWebサイトに反映・ローンチできるようになりました。私自身もプロジェクトとの向き合い方に変化が生まれましたね」YOUTRUSTでは、キャリア祈願ができる『ユートラ神社』、キャリアのご縁が生まれるご円卓Bar『ユートラエールガーデン』などイベントの企画も多い。これらの告知、企業向け・ユーザー向けキャンペーンの裏側でも、STUDIOが貢献したのだろうと伺える。一方、STUDIOの導入で大きなBeofre Afterを実感していると答えたのがLuup社の石田氏だ。大きな変化は2つあるとした上で、まずは1つ目に、コミュニケーションパスが減ることの重要性をあげた。石田「私たちの事業にはモビリティというハードウェアを製造する部署や街の中にポートを設置する部署があります。他にも、バッテリー交換をする部署もあれば、マーケティングや広報、ソフトウェア開発の部署などもあります。デザイナーやプロダクトマネージャーは多岐にわたる部署のメンバーとのハブとしてコミュニケーションをとることが求められます。そのため、STUDIOを使うことによって、開発におけるデザイナーとエンジニア間のコミュニケーションを省略できるのは大きなメリットでしょう」そして2つ目の変化として、広告代理店に依頼したLPを、STUDIOを使って作成してもらったというエピソードが紹介された。石田「規模が大きいプロジェクトだと、弊社エンジニアと広告代理店との間でやりとりの回数が増えるため、スケジュール進行に遅れが出る可能性も少なくありません。これがSTUDIOを活用した制作になると、サーバーにアップロードすることも不要になりますし、レビューもSTUDIOのページだけで完結します。エンジニアのリソースを割く必要もなくなったため、体制作りにも柔軟性が生まれました」Webサイトの公開スピードやコミュニケーションコストの削減などのメリットが語られる中、予算面で大きなコストカットができる点も魅力だと話すのは、RIZAPグループの佐藤氏だ。佐藤「開発予算は大幅に削減されますよね。基本的にすべてのWeb制作をSTUDIOで作るようになれば、本当に重要な局面だけ社内のエンジニアを頼ればいいという状況が作れます。自社で開発するとなると、サーバーを立ててステージング環境やデプロイ環境を作り、リリース後もサーバーの監視が必要になり、障害が起きれば対応しなくてはならない。これらが不要になることの意味は非常に大きいと思います」ここで重要になるのが、内製と外注の二元論の話ではないということだ。リソースをかけるべきところに集中させることで事業会社は投資対効果をより高めることが可能となる。Web制作会社の側からも、STUDIOの活用が有効だと認められる場合にはクライアントへ積極的に提案することで、新たなコラボレーションの可能性が生まれるかもしれない。菊地は今後の在り方として、Web制作会社や事業会社、広告代理店を含めた多くの関係者がSTUDIOを起点としたエコシステムを構築できるような取り組みをしていきたいと、今後の方針にも言及する形を見せた。スタートアップのデザイナーが語る、現場で活躍するSTUDIOの有用性とは?パネルディスカッション最後のテーマは、STUDIOの大きな特徴の1つである「更新のしやすさ」についてだ。Luup社でデザイナーを務める東海林氏は、自らの視点でSTUDIOの魅力を会場に語りかけた。東海林「すでに石田が言及していますが、コミュニケーションコストが削減される点は本当に大きな魅力だと思っています。デザインと実装がワンストップで可能となるため、大げさに言えば、PMとの合意さえ取れれば私一人だけで実装・公開までを完了させられます。スケジュールの組み方にも柔軟性が生まれるため、重要なポイントに絞って仕事を調整できるようになりました」そう話した上で、Luup社がアプリを主体に運用しているからこそ、STUDIOからのメリットも大きいのだと補足した。アプリの場合、ステージングの確認を仰ぐ際にも専用のアプリをインストールしてアップデートさせるといったひと手間がかかってしまう。STUDIOの場合はデザインやコンテンツのプレビュー機能を備えており、変更内容をリアルタイムにチェックできる。そのため、社内でクイックに確認してほしい場合には重宝しているようだ。修正が必要な箇所があったとしてもその場で編集が可能。フィードバックをもらいながら、デザインやコンテンツを調整できる点を大きく評価した。パネルディスカッションは終幕へと向かい、登壇者の3名はそれぞれに、今後のSTUDIOに対する期待や要望をファシリテーターでありSTUDIO CPOの菊地に伝えた。併せて、菊地よりクロージングの挨拶がされる。菊地「Webサイトは、作って終わりということがありません。我々はSTUDIOを通じてWeb制作のフロー全体をより良くするとともに、Webサイト制作の在り方、運用の在り方、それ自体の在り方を変えていこうとしています。作りやすいだけではなく、その後もずっと使い続けられるようにするため、開発にもより注力して取り組んでいます。今回登壇してくださった3社を含め、急成長する企業に我々もしっかりと追いついていくプラットフォームを目指したいと思いますので、皆さん今後もどうぞよろしくお願いいたします」以上をもって、STUDIO DESIGN AWARD 2023におけるすべてのパネルディスカッションが終了した。最後にSTUDIOではスタートアップ、中小企業、大企業、行政、教育機関まで様々なユーザー様における導入と活用促進をサポートするEnterpriseプランを提供しております。大きな集客が見込めるキャンペーンサイト、イベントサイト、新事業サイト、個別商品のブランディングサイト、採用サイトなどを新規に構築したい場合セキュリティや公開サイトの安定稼動に一定の水準が求められる場合オンボーディングのみならず社内で活用推進する為に専任サポートによる伴走支援が欲しい場合既存サイトをノーコードに移行したいが、一部サブディレクトリから段階的に実施したい場合上記のようなユースケースや課題をお持ちの企業様は、Enterpriseプランの窓口よりお問い合わせください。