STUDIOを実際に利用しているユーザーにインタビューをしていく企画「STUDIO Story」今回のゲストは、2018年12月に開催される日本最大級のデザインカンファレンス「デザインシップ」の運営者であり、一般社団法人デザインシップの代表理事を務める「広野 萌」さんと「白鳥 友里恵」さんです。STUDIO CPOの甲斐と「デザイナーの壁」について語っていただきます!日本最大級のデザインカンファレンス「デザインシップ」とは?(左)白鳥 (中)甲斐 (左)広野井上(ファシリテーター):本日はよろしくお願いします!STUDIOのライター担当の井上美穂(いのうえ・みほ)です。本日はファシリテーションを担当します。白鳥:こちらこそよろしくお願いします!広野:僕は普段お昼から活動を始めるので、ちょっとまだエンジンがかかっていない状態ですが、、、頑張ります!(笑)白鳥:こんな元気がない広野くん、初めて見たかも。甲斐:僕も夜中に開発がはかどって、気づいたら朝になってました。エンジンがあまりかかってないですが……頑張ります!(笑)井上:少しずつみなさんのエンジンを暖めていきましょうかね(笑)。まずは自己紹介を簡単にお願いできますか?広野:一般社団法人デザインシップで理事を務めながら「FOLIO」というフィンテックベンチャーでCDO(Chief Design Officer)をしています広野萌(ひろの・はじめ)です。白鳥:株式会社メルカリの子会社の「メルペイ」で新規サービス立ち上げのデザイナーを務めながら、デザインシップの運営もしている白鳥友里恵(しらとり・ゆりえ)です。甲斐:次世代のWebデザインプラットフォーム「STUDIO」のCPO(Chief Product Officer)を担当している甲斐啓真(かい・けいま)です。井上:早速ですが、STUDIOでイベントページを制作されている「デザインシップ」について教えていただけますか?広野:デザインシップは、様々な業界における一流デザイナーが集結し、それぞれの叡智や想いを爆発させる、日本最大級のデザインカンファレンスです。デジタル、グラフィック、プロダクト各業界のデザイナーに講演してもらうかたちで、2018年12月1日に開催します。STUDIOで作成されたデザインシップのサイト design-ship.jp井上:運営は何名でやられているんですか?白鳥:20名でほぼ全員デザイナーです。みんな平日は企業で働いており、有志のメンバーが運営に参加しています。井上:みなさん兼業なんですね!熱量高い。広野:高いです!デザインシップは「業界の『壁』を超えてデザイナーの叡智を集結させる!」という目的と「業界におけるデザイナーの地位を向上させたい!」という2つの目的を持ったカンファレンスイベントなのですが、参加しているメンバーも、同じような目的やデザイン業界に対しての貢献意識を持っている、熱量の高いデザイナーが多いんです。迫り来る変化の波ーーデザインシップがデザイン業界の壁を壊そうとしているワケ井上:なるほど。デザインシップの2つの目的を詳しく教えてもらえますか?広野:1つ目の目的の「業界の壁を超えてデザイナーの叡智を終結させる!」という背景には、デザイン業界全体に変化の波が起きているという背景があります。井上:変化の波というのは?広野:従来のデザイン業界は、プロダクト、グラフィック、デジタルなど業界ごとに分断されている構造でした。言い換えると、デザイナーは特定の分野に関する知識だけを求められがちでした。ただ、ITや電子技術が進歩して、ハードウェアとソフトウェアが密接につながるようになったことで、プロダクト単体の価値よりも、そこから生まれるユーザー体験(UX)が重要視される傾向になってきたんです。つまり、デザイナーはユーザー体験を最適化するために、プロダクトなどの“モノ”単体だけでなく、“コト”のデザインまで考える必要になってきたんですよ。白鳥:ユーザーニーズの変化に伴って、デザイナーの役割が多様化しているんだよね。広野:そうそう。従来は、ユーザーが欲しているものとか、優れたプロダクトが業界ごとにきっちり分かれていたんだけど、今はゆるやかにつながっているんです。例えば、Macを持っていたら、それを起点にして、モバイル端末を購入したりアプリを選ぶ。iTunesを一緒に使いたいからiPhoneを買う、というような。井上:まさにハードとソフト、業界を超えたコラボレーションが起きていますね。白鳥:デザイナーにとっては、この流れは伝統的なクラシカルデザインと比較的新しいと言われるUIやWebデザインなどのデジタルデザインの融合でもあるんです。ただ、以前からこの2つはつい平行線に扱われることが多くて、クラシカルが黒だとすると、デジタルデバイスは白みたいな考え方がされてしまう。でも本来、双方はゆっくり繋がっているものなのだからデザインシップでは、この2つをグラデーションのようにつなげたいという狙いもあります。広野:そのためにも、業界の壁を超えたナレッジの共有が必要なんです。でも、世の中を見ると、そういう交流の場はなかなか無い。UX/UIなどをテーマにした勉強会や交流会はありますが、業界として必要としているのはそういう特化型のイベントではないと思っています。だからこそ、業界が異なるデザイナー同士が「デザイン」という共通項をテーマに交流できる「デザインシップ」が必要だと思ったんです。壁をぶち壊す!井上:なるほど。2つ目の「業界におけるデザイナーの地位を向上させたい!」はどうですか?広野:これは僕の実体験にも基づくのですが、海外と比較して国内はまだまだデザイナーの地位が低いと思っています。僕はFOLIOで、Chief Design Officerというプロダクトデザインの最高責任者を務めていますが、多くの日本企業では、CDOと呼ばれるポジションを用意していないと思うんです。井上:確かにそうですね。白鳥:デザイナーのポジションが業界的に確立されていないのは、構造的な問題もあるかなと考えています。一昔前の世代だとデザイナーは黒子に徹するのが美学とされていて「『自分が作りました』と言いにくい時代もありました。ポスターに自分のクレジットが入っていなくても、世に出た時に「ステキ!」と言われているのを見て、それを隠れて見守るのが美徳とされていたから、デザイナーは自分が作ったのを主張することに慣れていないのかなと思っています。井上:逆に、白鳥さんや広野さんのような、スタートアップ界隈のデザイナーは制作物を自分のブログで紹介したり、拡散したりするのに力を入れてますよね。スタートアップ界隈のデザイナーは比較的、主張することに慣れている傾向にあるんですかね?白鳥:そうですね。そもそもスタートアップの場合、デザイナー自身も広報側にまわらないとプロダクト自体を認知してもらえないという課題もあるので(笑)。広野:あと、スタートアップのスピード感的なところも影響しているのかなと。車だったら2年から3年かかるものを、スタートアップは1ヶ月でマーケットに出さないといけない。リリースまでの期間をいかに短縮して高い効果を出せるかが重要、という前提があるからこそ、世に出たらデザイナーも拡散を頑張らないといけない。これはスタートアップだけじゃなくてIT業界全般に言えることなのかも。デザイン業界を盛り上げるためにもノウハウを積極的に公開するべき白鳥:確かに。あと、IT業界は自分の成果物を主張しやすいけど、たまに隣の畑の話を聞くと、デザイナーの仕事が秘伝のタレ化する傾向にあるようです。ひと昔前はノウハウを表に出さないことで、競争力を上げるという意義があったからだと思うんですけど。今ではネットで簡単に情報収集できるので、隠していてもすぐにバレちゃう。隠す意味がないんですよ。だったら、丸ごと公開してそれ自体をアピールすれば、会社やプロダクトの宣伝にもなるし、長い目で見た時に業界自体も盛り上がるし、良いこと尽くしだと思います。広野:そうそう!だからこそ今デザインシップが必要なんです!秘伝のタレ化していた業界のデザイナーの知恵が共有されることで、デザイン業界全体の発展やイノベーションにつながる。それは日本がグローバル競争で生き残るためにも必要だと僕たちは確信しています。「コーディングレス」でデザインシップのイベントサイトを制作井上:熱いですね!そんな強い信念を持ったデザインシップがSTUDIOを使おうと思った経緯って何だったのでしょうか?甲斐:もともと僕と広野さんが知り合いで、ちょうどデザインシップのサイトをティザーサイトから本サイトにリニューアルするタイミングだったんですよね。広野:そうそう。その時にSTUDIOを紹介してもらって。STUDIOはデザイナーでも自由度が高いデザインでサイト設計ができることや、何よりコードを書かずにそのまま公開まで出来るのが便利だなぁと。白鳥:私はSTUDIOを使って実作業をすることが多いんですけど、マークアップを自分たちでやろうとすると「あの人じゃないとサイトの更新ができない……」という事態が起こりがちなんですよね。広野:イベントサイトという性質上、更新作業が突発的に発生することも多いしね。マークアップを誰か1人に集約してそのひとの専業にしてしまうと、急ぎのタスクで「画像の差し替えしなきゃ」「URLが違うから直さなきゃ」「クライアントの要望反映しなきゃ」という依頼にすぐに対応できない。白鳥:もちろん、デザインシップの場合は、デザイナーと言えど、みんなGitHubは使えるし、フロントエンド作業もそこそこできるけど、ローカルでコードを直して、Gitにあげて、レビューして、本番環境にデプロイして、みたいなフローを毎回全員でやると、純粋にスピードが落ちるし、運営的にも良くないなぁと。井上:なるほど。STUDIOだったらその懸念点を解決できますね。白鳥:そうですね。STUDIOはアカウントさえ持っていれば、誰でもすぐにサイトの修正ができるし、マークアップなどのコーディング作業も不要ですし。広野:あと、個人的にSTUDIOって良いなぁ!と思うのが、SEOとかレスポンシブとか細かいところを気にしないで、デザインに集中して作業が進められるところ。これはデザイナーにとっては本気(マジ)で嬉しい!と思います。決め顔ウィンク😉白鳥:あ、それわかる!一般的なホームページ作成サービスをデザイナーが使おうとすると、レスポンシブがうまくいかなかったり、レイアウトの微調整ができなかったり、あともう一歩が届かないようになっていて……。その点、STUDIOはデザイナーやプロフェッショナル向けだなぁと感じます。甲斐:従来のホームページビルダーとSTUDIOの違いはまさにそういうところで、細かいところまでデザインにこだわれる次世代のWebデザインプラットフォームを目指しているんですよ。デザイナーとエンジニアの間の壁を壊すーSTUDIOが目指す未来白鳥:あ、STUDIOを良いなぁと思ったポイントがもう1つありました!井上:ぜひぜひ(笑)。白鳥:デザインをしながらマークアップを体感できる、という点です!「こうやってマージンを入れるんだ」「レスポンシブにしないといけないから、モバイル用のデザインはこうしなきゃ」「テキストサイズを最適化しなきゃ」ということを、実際に手を動かしながら理解できたのはとても良い体験でした。デザインをしながらマークアップを体感できる😆甲斐:なるほど!白鳥:デザイナーとエンジニアの仕事って基本的には分業で、デザイナーはデザインデータをエンジニアにそのまま渡して、エンジニアはそれをもとにマークアップしていく。みたいな流れが主流ですが、STUDIOでマークアップを疑似体験することで、どうやってデザインが崩れるのか、その事故現場を目の当たりにできる。その結果、どこまでデザインが実際のコードにした際に再現できるのかよく分かるようになりました。甲斐:エンジニア目線でも、デザインを考えられるようになったと。白鳥:そうですね。エンジニアがどういう目線でデザインを評価するのか、その感覚の手がかりになると思います。このレイアウトは実現できるけど、要素を重ねないと作れないから、ソースコードは美しくないな......とか。「良いデザインをつくる」という目標に向けて、デザイナーとエンジニアが連携できるようになったのは、予想外の効果だったなぁ。甲斐:それSTUDIOが実現したいことに近いかも。現状のプロダクトって、デザイナーが作ってる価値とエンジニアが作ってる価値が合わさって最終的にユーザーに提供されると思うんですよ。 つまり、職種の壁を超えないと絶対に出せない価値というものがあると思います。広野:それってどんな価値ですか?それってどんな価値ですか?甲斐:例えば分かりやすい例だとWebでのインタラクションの実装。どんなに、プロトタイピングツールで完璧にデザインしても、実際のUXはエンジニアの腕にかかってしまいます。他にも要件定義でデータベースの設計をすると思うのですが、これも実際のUXにかなり影響が出る部分ですが、なかなかデザイナーが踏み込むのは難しいですよね。広野:なるほど。甲斐:これがもし、コードを書かずに1つのプラットフォーム上でできるようになれば、「デザイナー」「エンジニア」という括りは無くなって「良いプロダクトを作る」という本質的な作業にフォーカスできるようになると思います。一般的に動画「デザイナー」とは言わないじゃないですか。これは、動画制作がワンフローで完結でき ることを表しているからだと思います。STUDIOが目指しているのは「デザイナー」「エンジニア」の間の壁が完全に無くなって、両方を合わせたような別の呼ばれ方をしている未来ですね。STUDIOが目指しているのはデザイナーとエンジニアの壁がなくなった未来白鳥:なるほど。確かに昨今の流れとして、デザイナーもエンジニアも作業に当たる部分はなるべくAIで自動化して、技術的にもう一段階上にいこうとしているなぁと感じます。それが顕著に表れているのがランディングページやWebサイトのマークアップなどの作業なのかもしれませんね。甲斐:HTMLとCSSはプログラミング言語じゃないって話が最近ちょっと盛り上がっていたと思うのですが、個人的にはマークアップ領域も、フロントエンドやバックエンドの開発領域も大差ないかなと思っています。STUDIOも今は静的なWebサイト作成に特化していますが、最終的には「Webサービス」と呼ばれるような機能を持ったものも作れるようになることを目指しています。※ただ、デザインの見た目と完全に一致するマークアップ領域に比べ、ロジックがメインのフロントエンドやバックエンドの領域をプログラミング以上に快適に使えるツールとしてGUIに落とし込むのは結構難しいですが……。白鳥:いわゆる静的コンテンツだけじゃなくて、動的な部分まで対応していくということですか?甲斐:そうです。もう間もなくコンポーネント機能がリリース予定で、来年春ごろまでには順次API接続、CMS機能などが提供できる予定です。 かなりの領域でコードを書かずに作れるようになってくると思います!広野:それは楽しみです!甲斐:ちょっと2人に開発中の機能見せちゃおうかな......。広野、白鳥:見たい見たい!ワイワイ……井上:さて、そんなこんなでSTUDIOの今後の展開にぜひご期待ください!デザインシップの広野さん、白鳥さん、本日はありがとうございました! また読者のみなさんも最後まで読んでいただきありがとうございました!デザインから公開まで、コーディングなしで完結。STUDIOを無料で始める ⇒https://studio.design/ja/(取材、執筆:井上みほ 写真撮影:Yutaka Ishii)